バドミントンの国別対抗戦トマス&ユーバー杯が27日、中国の成都市で開幕する。男子トマス杯、女子ユーバー杯は、ともに2複3単で3勝を競う団体戦だ。女子日本代表は、24年に初の日本A代表入りを果たしたシングルスの宮崎友花(柳井商工高校)らが初めて参加する。

チームのけん引役となるのは、最年長選手として臨む奥原希望(太陽ホールディングス)だ。負傷を繰り返して調子を上げるのに苦労しているシーズンで、24年パリ五輪の出場権は逃した。しかし、五輪レース最終戦のアジア選手権で敗れた直後から、ユーバー杯に向けた強い意欲を示した。

「今年のユーバー杯は、結構ターゲットにしている部分。レースが終わっても、気持ちは切らさずに、チーム戦に向けて挑みたい。代表選手としては、いつまで出られるか分からない。(国際大会の団体戦は)ラストチャンスというイメージ。五輪(出場権)がある人とない人で、少し意識の差は出てしまうかもしれませんが、ユーバー杯は、やっぱりもう一度取りたいタイトル。五輪の道は途絶えたけど、気持ちを切らせるつもりはなく、歩みを止めるつもりも全くない。やっぱり、強い日本を示したい。今回は、宮崎さんも入っているので、次世代に向けて伝えたいものもある。ワンチームで戦えるようにしたい」(奥原)

シングルスは、五輪出場権を得た山口茜(再春館製薬所)、大堀彩(トナミ運輸)も、軽度の負傷を抱えた状態。3月のアジア選手権では、ハイパフォーマンスを発揮するには至らなかった。五輪に向けてコンディションを調整したいタイミングで、どこまで調子を上げられるか、気がかりだ。シングルスの陣容は、どの国が相手でもひけは取らない。大会は、2複3単の団体戦。単、複、単、複、単の順番で行われ、同じ種目は、世界ランクの高い順に起用しなければならない。最後までもつれた場合、プレッシャーが強い場面で第3シングルスに奥原を起用できる点は、心強い。

ただし、満身創痍のシングルス勢ではある。若い宮崎の奮闘にも期待したいところだ。3月の欧州遠征では、オルレアンマスターズ(BWFワールドツアースーパー300)を優勝したほか、スイスオープン(同300)でも、元世界女王のP.V.シンドゥ(インド)や大堀を破るなど実力を示した。今後のワールドツアー上位大会への出場に向け、強敵相手の連戦に耐える身体作りを課題に挙げているが「結構いろいろな選手と対戦してきて、自分の(ショットに相手の)タイミングが合わない選手もいるので、そういう部分は、独特のタイミング(でプレーできているということ)なのかなとは思っている」とプレー内容では、手応えを得ている。

2月のアジア団体選手権で1試合しか起用されなかった宮崎は「体調を崩して良いプレーをできなかったし、迷惑をかけてしまった。まずは、しっかりと身体の調整をしっかりして、向かって行けたらいい」と団体戦への再挑戦を見据えた。日本の次期エースとして期待がかかる逸材。出場すれば、第3シングルス。プレッシャーがかかると、自分をコントロールできない課題も見えており、課題と向き合うことになる。団体戦特有の雰囲気の中、日本の躍進の原動力となれるか、注目される。

日本は、2018年に37年ぶりの優勝を果たしたが、当時のメンバーで残っているのは、奥原と山口のみ。ダブルスは、志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)、松本麻佑/永原和可那(北都銀行)、櫻本絢子/宮浦玲奈(ヨネックス)の3ペアがエントリー。前回の優勝を経験している福島由紀/廣田彩花(岐阜Bluvic)は、廣田が左ひざを負傷しているため、メンバーから外れている。エースペアとなるのは、世界ランクが最も高い志田/松山。銅メダルを獲得した前回2022年の大会に出場したが、準々決勝の韓国戦で敗戦。志田は「第1ダブルスですごく緊張して自分たちのプレーが出せなかった」と当時を振り返った。会場やシャトルの特性に慣れないまま、負けられないプレッシャーの中で、強いペアと対戦すると、プレーが縮こまりがちだ。しかし、第1ダブルスは、第1シングルスの結果を受けてチームを勢いに乗せたり、救ったりする重要な立場。しっかりと力を発揮しなければならず、志田は「先輩たちと戦える最後の団体戦になるかもしれないので、絶対に優勝する気持ち、チームに貢献する気持ちで取り組みたい」と今度こそエースの役割を果たす気概を示した。

第2ダブルスは、2番手の松本/永原が起用される可能性が高いが、3月のアジア選手権では、櫻本/宮浦が、世界ランク1位の陳清晨/賈一凡(チェン・チンチェン/ジァ・イーファン=中国)を相手にファイナルゲーム19点まで競る大善戦。エース格とも勝負できる力を示した。2人は、22年の夏に組み始めてから、まだ2年経っていない、経験値の浅いペア。攻め急ぐ癖から少しずつ脱却しつつあり、プレーの幅が広がっている。パリ五輪の出場権を得るには至らなかったが、伸び盛り。ユーバー杯は初参加だが、櫻本は「すごく緊張すると思うけど、楽しみな部分もある。いつも切磋琢磨している日本のライバルたちがチームメイト。一緒に戦うので、楽しみ」とポジティブに捉えていた。また、宮浦は「すごく上のランクの人ともしっかりと戦えるようになってきたので、出させてもらえたら、本当に上の選手に挑戦していきたい」と出場に強い意欲を示した。

大会に参加するのは、16チーム。4チームずつ4組に分かれてグループリーグを行い、各組上位2位が決勝トーナメントに進む。日本は、C組でインドネシア、香港、ウガンダと同組。日本とインドネシアが上位候補だ。シングルスのエースであるグレゴリア・マリスカ・トゥンジュン、エースペアのラハユ/ラマダンティは強敵だが、総合力では上回れるはず。1位通過を目指したい。全体を見れば、最多15回の優勝を誇る中国が圧倒的優勝候補。3月のアジア選手権では、シングルスの表彰台を独占。ダブルスもベスト4に3組が入った。まったく穴のない布陣だ。永原は「中国勢が本当に強い。いつもなら競っている試合も、スコーンと(快勝)で勝って、すごいなと感じる。ユーバー杯も中国開催。多分、もっと気合いが入って臨む。チーム一丸で日本という(一つの)チームとして頑張りたい」と警戒していた。どこが中国の牙城を崩すかは、大会の一つの見どころとなる。前回優勝の韓国は、シングルスの3番手が手薄だが、エースのアン・セヨンは世界ランク1位。ダブルス2つを勝てれば、連覇の可能性はある。中国を日本、韓国が追う構図と見て良いだろう。世代交代を見据える日本は、3大会ぶり7回目の優勝を果たせるか。総力戦で誰が存在感を示すのか、楽しみだ。

文:平野 貴也